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DNARという選択肢

[2026.09.02]

DNARとは「Do Not Attempt Resuscitation」の略で、心臓や呼吸が止まったときに、胸骨圧迫や人工呼吸、気管挿管などの心肺蘇生を行わないという方針です。

「心臓が止まっても、蘇生すればまた元気になる」と考えている方は少なくありません。しかし、高齢者の心肺蘇生の現実は少し違います。

70歳以上を対象とした研究では、病院内で心停止となり心肺蘇生を受けた方が退院できる割合はおよそ12~29%、病院外で心停止した場合は0~11%と報告されています。別の研究では、院内心停止後に退院できた割合は70歳代で18.7%、80歳代で15.4%、90歳以上では11.6%でした。

また、日本の75歳以上の院外心停止33万人以上を調べた研究では、1か月後に生存し、かつ脳機能が良好だった方は全体の約0.9%でした。心肺蘇生そのものには肋骨骨折や人工呼吸器管理、集中治療など大きな身体的負担を伴います。

特に、老衰や進行したがん、重い心不全・呼吸不全、認知症などがあり、人生の最終段階にある方では、「心臓が止まったときに蘇生することが、本当にその方の望む医療なのか」を元気なうちから考えておくことが大切です。そしてその考えを医療者に表明

しておくことでいざという時に自分の望まない医療行為を受けずに済みます。

DNARは「治療をしない」という意味ではありません。痛みや息苦しさを和らげ、食事を楽しみ、ご家族との時間を大切にする医療は最後まで続きます。そして、当院はそのような方々の支えになれるよう日々努力を重ねています。

人生の最後は管や人工呼吸器につながれながら迎えるよりも、大切な人とゆっくりと過ごすのが一番と思う今日この頃でした。

 

参考文献:Improved Survival With Favorable Neurological Outcome in Elderly Individuals With Out-of-Hospital Cardiac Arrest in Japan - A Nationwide Observational Cohort Study

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